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タイで「เจ้าแม่เพลงเศร้า(悲しい歌の女王)」と称されるZom Marieが、第26回タイフェスティバル東京最終日の大トリを飾った。「女王」は伊達の称号ではない。例えば文字通り、T-POPシーンのトップ女性ボーカリスト4人による「4 Queens Concert」では、Ink Waruntorn、BOWKYLION、Violette Wautierと肩を並べて出演。タイ最大級の屋内コンサート会場Impact Challenger Hall 1(約1万2,000人)が即日完売している。つまり、T-POPシーンで最も認められているソロシンガーのトップクラスに数えられる一人でもあるのだ。
Zom Marieの楽曲は数々のタイの人気ドラマでの主題歌に起用されている。タイフェスティバル東京での彼女のステージを観た方の中には「ああ、あのドラマの主題歌だ!」と気づいた方もいたはずだ。タイは人気ドラマの多くが恋愛ドラマ。ロマンティックで劇的なメロディーに悲恋の歌詞を乗せたZom Marieの楽曲は、様々なドラマの風景にマッチするのだろう。
しかし、それだけではない。Zomが「เจ้าแม่เพลงเศร้า(悲しい歌の女王)」と言われる所以は、片思い、裏切り、別れを告げられた心の痛み、思いのすれ違い、孤独の切なさ…ありとあらゆる悲恋の情景を、透明感のあるハイトーンと、感情の機微を細やかに織り込むボーカルワークで、時に鋭利な刃のように心を抉ってくる点にある。歌詞がわかるタイ人なら「そうよ、私もそういう目にあってるの。あいつ酷いわ!うぇーん」と号泣してしまうだろうし、歌詞がわからない日本人でも辛い時に聴くとほろりと泣けてくる。
なぜだろう。人は失恋したとき、数日落ち込んだ後、わざわざその気持ちに立ち戻り、失恋ソングを聴き、心を傷つけながら思いきり泣く。時にはカラオケに行き、わざとその苦しみを思い出しながら歌い、号泣することで失恋期間を乗り越える生き物。彼女はそんな傷ついた心に「ひとりじゃないよ」と寄り添ってくれるシンガーだ。
一方でYouTuberとしても335万人を超えるフォロワーを持ち、軽快なトークと斬新な企画を生み出す才女でもある。
タイランドハイパーリンクスでは、第26回タイフェスティバル東京のステージが終了したまさにその時、彼女にインタビューを行うことができた。
記念すべき日本初のステージを終えた彼女は、まだステージの熱を帯びたまま、その場に現れた。

Zom:日本での取材、緊張しますー。
――(笑)…私の方が緊張してますよ。まずは第26回タイフェスティバル東京のトリを務めた感想は?
Zom:ステージに出るまではドキドキして大変だったんですけど、観客の皆さんのノリがとても良くて、私もリラックスできました。
――私はよくタイに行くんですけど、ステージ見て「ああ!なんだ、この曲もZomさんの曲だったのか!」という曲が多くて驚きました。それに客席との一体感が凄かったですよ。Bell(Bell-Warisara Jitpreedasakul)さんとの共演も素敵でした。
Zom:本当ですか?光栄です!
――フランスで生まれて、タイに来たと聞きました。
Zom:私はタイとフランスのハーフなんですけど、5歳の時にタイに戻ってきたんです。
――ああ、じゃあもう、タイ人として辛い料理も平気で食べられちゃいますか?
Zom:はい。小さい頃は辛い料理は全く受け付けなかったんですけど、少しずつ慣れてきて…でも、今も激辛料理はダメかなあ。タイ料理を食べる時はいつも「あまり辛くしないで」とオーダーします。
――今もフランスに行くことはあるんですか?
Zom:親戚に会いに行きますね。去年は妹がフランスの大学を卒業したんですよ。その時にも会いに行きました。
――そうなんですか!タイとフランスって似てるなあと感じるところはありますか?
Zom:グルメな国と言うところがそっくりです。もちろん、食材や料理は全く違いますけどね。
―― 確かに。色々な国で発表されている美食の国ランキングやグルメな国ランキングでは、フランスもタイも上位ですよね。

――デビューのきっかけを教えてください。
Zom:小さい頃から歌うことが大好きだったんです。16歳の時にコンテスト(「LG Starz Talent Contest 2008」)に合格して、GMM Grammyに所属したことが歌手になったきっかけですね。
――取材の前にZomさんの最近の曲を聴いたり、MVを見てきたんですけど、作詞、作曲、編曲、ほかにもプロデュースにもZomさんの名前が入っている楽曲がありますね。
Zom:他の人に作ってもらった曲も、もちろん多いんですけど、そうですね…最近はほとんど自分で手掛けていますね。制作には積極的に参加するようにしています。
――ME Records(Muzik Move傘下)に移籍してまだ1年だそうですね。
何か理由があったんですか?例えば全部自作したくて、その環境が整っているとか?
Zom:前の所属先でも自分で作ることは可能だったんですよ。ただ、丁度契約が切れる時期だったので他のメーカーとも話をしました。
その時、今のME Recordsの社長とも色々話しをしたんですよ。その時「自分の考え方にとても合っているな」と思ったんですよね。
私は歌詞も曲もアレンジも凄く大切にしているんです。今、タイの音楽シーンはT-POP、ルクトゥン、ロック、他にも色々なジャンルに分かれていて、それぞれに考え方があると思うんですけど、ME Recordsは歌詞も曲もアレンジも一つひとつ大切にしていると感じたんですよね。
例えば、これは私の場合ですけれど、私がプロモートしたい曲は、アレンジで入っている音を全部ミュートして、ギターの音だけを残したとしても完成されている曲なんです。

――アレンジに頼らなくても完成されている曲で勝負したいんですね?
Zom:そうです。ここならそれができそうだなと思って決めたんです。
――MVも最新から昔のものまで遡ってみていたんですけど、強烈に印象に残ったのは『ตัวแทนของใคร (Shadow)』のMVですね。制作にも関わっているそうですが。
Zom:これに関しては、沢山話したいです(笑)。時間はありますか?
――もちろんです。
Zom:普通は曲ができてからMVを制作するものなんですけど、もうこれは曲を作っているときからMVの映像のアイディアが浮かんでいたんです。
私はWebでLive配信をしているんですけど、そこで私を含めて「タイの4大そっくりさん」と言われている人がいるんですね。それをネタにユーザーさんから、からかわれちゃうことがあるんです。
――どなたでしょう?
Zom:Jangjit さん(Punnasa Promyos※ 女優・モデル)、Praewさん(Praew Kanitkul※ 歌手)Daoさん(DJ Dao/Natthaphatsar Simasethian※DJ)なんですけど、「Jangjit さん、こんにちは!」とか「Praewさん、なんでそこにいるんですか?」なんて書かれてからかわれるんです(笑)。
だからこの曲を作っている時に思ったんですよ。「よぉし、次のMVには自分に似ているって言われている人たちを全部出演させちゃうぞ!」って。
――凄いアイディアですね(笑)。と言うか、出演交渉(笑)!よく皆さん出演してくれましたね。さすがです。
Zom:この曲は、今付き合っている彼の元カノが、自分に似ていることを知った主人公が「元カノの事を忘れてないじゃない!ちゃんと私を好きになって付き合ってよ!似ている人を好きになるなんてずるいよ!私を見て愛して」という歌詞なんです。
――タイのMVって歌詞の分からない日本人には凄くありがたい存在なんですけど、内容が映画並みに深いんですよね。『ตัวแทนของใคร (Shadow)』の最後がまさかの展開でびっくりしました。とても印象に残るMVですよ。でもそっくりさんと言われていたアーティストが全員出演していたと聞くと、また見る目が変わりますね。
Zom:ありがとうございます。実験的でしょう?元カノがロボットだったり、そして実は自分もロボットだったり(笑)。

――今回は同じ事務所のベルさんと一緒のステージでしたね。以前からお友達なんですか?
Zom:この事務所で初めて知り合いました。私はいつもSNSで見ていたので、知っていましたよ(笑)。
――ええ?そうなんですか。息がぴったり合っていたので以前から仲良しなのかと思っていました。
Zom:いやー、私は若作りしましたよ!
――何言ってるんですか(笑)?
Zom:だってベルちゃんより私は9歳も年上なんですから。
――これは正直な話ですけど、全然年の差は感じないですよ。
Zom:ふふふ。
――でも、確かにキャリアは長いですよね。その中で一番うれしかったことと、「しんどいなー」って思ったことを教えてほしいです。
Zom:2022年のソロライブが一番印象に残りました。4時間歌ったんですよ。
――えっ?ひとりで4時間?
Zom:(笑)はい。でも全然疲れませんでした。前日のリハーサルでは十分疲れたのに、本番では全く疲れなかったんですよ。
――4時間も歌うのは最初からきまっていたんですか?タイはコラボライブがものすごく多い印象ですけど、単独コンサートで4時間っていうのは珍しいような。
Zom:最初は2時間くらいで計画を立てていたんですけど、お客さんのノリが最高によくて歌い続けていたら4時間たっていました(笑)。すごく不思議なパワーをもらったんだと思います。自分もエキサイトしすぎて、その夜は眠れなくなってしまいました。多分眠れたのは朝の4時とか、5時かな?
――感情が高ぶって泣いちゃいそうですよね。そして、辛かったことは?
Zom:私は思い込みが激しいほうで、自分にプレッシャーをかけがちなところもあるせいか、昔は辛いことがたくさんありましたよ(笑)!
でも最近はどうだろう?自分もそれなりに先輩になりつつあるし、大きな存在にはなってきたからかな?だいぶ気持ちが落ち着いてきて、余裕ができたせいか、辛いと思うことはなくなりましたね。

――Zomさんは今、かなり幅広く活動されていますよね。歌手、女優、そしてYouTubeのフォロワーが335万人以上いるのには驚きました。その中で一番力を入れているのはやはり歌ですか?
Zom:はい。やっぱり小さい頃からの夢だった歌に一番力を入れているし、これからもそうしたいなって思っているんですよ。
――YouTubeに一番力を注いでいる方が、どれだけ力を注いでもなかなかこれだけのフォロワーを持つことは難しいと思うんですよ。さすがにスルーはできないですね(笑)。YouTubeを始めた理由は何だったんですか?
Zom:YouTubeを始めた理由は、GMM Grammyに所属していたんですけど、まだ曲の企画が出ていなかった時期だったからだと思います。それで、ギターを猛特訓していたんですよ。カバー曲をギターで弾き語るスタイルで始めました。まあ、そのうちライフスタイルになっていったんですけどね。
――フォロワーを引き付ける秘訣みたいなものはあるんですか?
Zom:私の場合、かなり色々なジャンルの動画を撮影しているんですよね。フォロワーさんが興味を持つ瞬間って「自分もこれやってみたい!」っていう時だと思うんです。
――急に伸びてきた!と思ったタイミングはどこだったんですか?
Zom:「ランダムBOX」っていう企画があるんですけど、日本のEco Ring(日本の総合リユース企業でタイにも現地法人がある。タイのアパレルやリユースショップに「この箱にはだいたい何が入っている」程度のランダムな仕分けで販売することで、コストを下げ、買い取った店側は箱から出して値付けをし店頭に並べる)の箱をいくつか買って「何が出てくるかな?」って開けていったんですよ。日本製のユーズドはタイで信頼されているので、みんな興味があったみたい。
今では「ランダムBOX」の企画はYouTubeで割とみんながやっている企画なので、私は、先駆けと言われています。だから「ランダムBOXのお母さん」とか言われちゃってます(笑)。
――旅行の動画も多かったですね。どこが一番印象的でしたか?
Zom:日本です。
――またまたぁ!
Zom:本当ですよ(笑)!これはYouTubeの企画だからではなく、私は年に7,8回日本に来るくらい、私は日本が大好きなんです。
――7,8回?それは多いですね。凄い!
Zom:仕事でも遊びでも一番最初に行きたいなあ、と思い浮かぶ国は日本なんですよ。
――そんなに?日本のどこに行くんですか?
Zom:たくさんありますよ。もう数えきれないくらい。特に私はディズニーが好きなんですけど、日本はLandもSeeもあるじゃないですか!あとは食事ですね。日本はレビューを見ずに適当に入った店でも、まず外れる店がない。それと、観光がしやすいです。日本って、東京や大阪、福岡みたいに各地方の主要都市以外であっても、それぞれの県に特徴があって、それぞれの県に魅力があるから、本当に興味深いです。

――タイの友人何人かに聞いたのですが、Zomさんはフランスにもルーツがあるので、ファッショナブルな印象を持たれているそうですね。今日も凄く素敵な衣装なんですけど、日常のおしゃれはどうしていますか?
Zom:これは気分次第なんですけど、何にもしたくない日は、どうでもいいTシャツとデニムで過ごしています。ただ、今日は気合を入れるわよ!ってなると、とことんおしゃれをします。
――ブランドや好きなスタイルはあるんですか?
Zom:私は全くブランドにはこだわらないですね。このスタイルが好き、というのもないんですけど、ただひたすら鏡を見て、ひたすら着替える。これが基本です(笑)。これはOK、これはダメ!を繰り返しているうちに、自信が持てるコーデが完成するんですけど、何時間も着替え続けます。だからお出かけする日やおしゃれしたい日は大変です(笑)。

――今回は初日本公演と言う形で、日本のファンの皆さんと接したZomさんですが、日本の皆さんに食べてほしいタイ料理は?
Zom:んー、日本人は辛いタイ料理は得意じゃなさそう。どうですか?
――『タイランドハイパーリンクス』はタイが好きな人が読むメディアなので、タイ料理好きな日本人も多く集まってると思います。もちろん、辛いタイ料理好きも。私は大好きです。
Zom:ナムクルック(ยำแหนมคลุก)がとっても美味しいです。私は大好き。オーダーする時には「あまり辛くしないで」と言ってください。
生の豚肉や、カリカリに炒めたご飯、ハーブや野菜と一緒に混ぜて食べるんですけど、もう、本当に美味しい!
――ナムクルックもそうですけど、タイ料理の郷土料理なんでしょうか。生の豚肉を食べる風習がある地方もあるそうですね。日本では生豚肉を食べる風習がないので、どんな味がするのかなー?って不思議に思っていました。
Zom:大丈夫。放射線照射殺菌済みの豚肉があるんですよ。ナムクルックの場合は発酵させた豚肉です。とーっても美味しいですよ。
――今度私もチャレンジしてみますね。では最後に今日のステージを見に来てくださったファンの皆さんにメッセージをお願いします。
Zom:日本の皆さん、これからもよろしくお願いしますね。日本には何度も来ているし、日本の観光庁の仕事でも来たことがあるんですけど、今回は初めて日本でコンサートをしました。また会えるかな?もし気に入ってくれたら、タイにもコンサートやイベントに来てくださいね。
この記事を読んで、私の事を知ってくれたら嬉しいです。
――ありがとうございました!

「タイの音楽好き歴が長い」という方なら、まだT-POPがここまで日本で注目されていないころからZom Marieの名前は知っているという人が多い。彼女はそれだけ長く、タイの音楽シーンに存在し、今も女性シンガーとして不動の人気を誇っている。
そんな彼女だから、我々も最初は緊張して臨んだのだが、その心配は徒労に終わった。
明るくしっかりと考えながら話し、また、話したい内容であれば自分から時間を延ばして伝えきるようなアーティスティックな女性だ。
フランスとタイというルーツを持ち、独自の感性でタイの音楽シーンやSNSの世界を自由に泳ぐZom Marieが、次はどんな活動をしていくのか。タイ人でなくとも気になって仕方がない。
[取材・文:吉田彩緒莉(Saori Yoshida/Interview・text)]
[通訳:Boy In Tokyo]
Zom Marie
https://www.facebook.com/zommarie/
https://www.youtube.com/c/zommarie
https://www.tiktok.com/@zommarie
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