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イン・ワラントーン独占インタビュー in 東京「ずっと日本が好きだった…」

2022年11月25日 配信

イン・ワラントーン独占インタビュー in 東京「ずっと日本が好きだった…」

毎年、ゴールデンウィーク明けに東京代々木公園で行われているタイ王国大使館主催のタイフェスティバル。タイのトップミュージシャンが集結し、タイの音楽に生で触れられる貴重な機会であるものの、2022年のタイ・フェスティバルはコロナ禍の影響もあり、オンラインで行われた。そこに集まっていた、今最も旬のタイのアーティストたちのパフォーマンスは、ひと昔前のそれとは全く異なるように感じた。
お決まりのフレーズ、お決まりのジャンルは言いようのない安定感があり、それはそれでタイミュージックの魅力でもあったのだが、ここ数年でタイの音楽シーンは大きく変わったように思える。まずはその多様性に驚かされた人も多いはず。

中でもイン・ワラントーン(INK WARUNTORN)の躍進は、凄い。いや、そんな単純な言葉では言い表せないのだが、とにかく凄いとしか言いようがない。

前回彼女に会ったのは、2018年のタイフェスティバル。
ミュージシャンとして最も活動が難しかったこの4年間で、人気が急上昇。タイのトップクラスのアーティストのみがパフォーマンスを許されるインパクトアリーナでの公演は、1時間もしないうちに完売。タイ女性アーティストランキングでは常に上位に入るアイコン的な存在になっていたのだ。

今回のインタビューは、日本のアーティスト、THREE1989(スリー) と共作した「LAST TRAIN」も含まれる日本デビューミニアルバム『bloom.』を引っ提げての来日時に行われた。
日本での初フルコンサートも大成功に終わったイン・ワラントーン。日本デビューまでの道のりとは?

 

コロナ禍はタイのアーティストも大変だった

―まずは日本デビューおめでとうございます!

イン:ありがとうございます!

--日本でのコンサートは2回目ですよね。

イン:はい。2回目です。4年前にタイフェスティバルで来日してステージで歌いました。日本でソロでフルのコンサートは初めてです。

--実はそのタイフェスティバルで、インタビューさせていただいたんですよ。持ち時間が少なくて10分くらいでしたけど(笑)。

イン:ああ!バックステージでインタビューしていただきましたよね!

--はい。そうです!この4年の間に、タイの女性シンガーを代表する存在になっている上に、日本デビューと、大躍進ですね。

イン:ありがとうございます(笑)。

―タイでの人気を知るためにタイ人の友達に色々聞いて来たんですけど「今日イン・ワラントーンさんにインタビューするよ」って話したら「えー、いいなー、いいなー!」って言ってました。

イン:そうなんですか(笑)?一緒に連れて来ればよかったのに(笑)!タイの場合はOKですよ。

--えーっ?連れて来ればよかったー。

イン:・・・(笑)。

--この4年間はタイだけではなく世界中で新型コロナウィルス拡大というこれまで体験したことがない大事件がありました。お仕事の幅も限られてしまったのではないですか?

イン:そうなんですよ。タイは特に最初の頃、行動制限が厳しくてロックダウンされてしまいましたからね。
一時期は全ての仕事がゼロになってしまいました。その後、オンラインコンサートを開催したりしましたが、行動制限付きですが通常のコンサートができるようになりました。
感染が減少して、段階を踏んで元に戻っていきました。

 

インパクトアリーナの1万席が1時間未満で完売

--そしてインパクトアリーナでのコンサートも大成功。

イン:あの1日は、6年間の自分の頑張りが報われた日でした。インパクトアリーナはホール全体で1万席あるんですけど、1時間でソールドアウトしたんですよ。

--インパクトアリーナでコンサートができる人は、タイのトップスターですよね。感想は?

イン:ステージから見た景色がとてもきれいでした。ファンの方たちは、インの成長をずっと見守ってきてくれた人が多いので、嬉し泣きしていた人もいたんですよ。

 

日本のファンは優しくてシャイ

--そして11月15日、日本でコンサートを終えたばかりですが、いかがでしたか?

イン:渋谷でのコンサートは「かわいい」という印象のコンサートでした。全フロア300人のライブハウスで、とてもフレンドリーな空間でしたよ。それと同時に異文化を感じることもできましたね。

--どんな点ですか?

イン:例えば、インがMCで話すことをタイのお客さんはタイ語なので当然わかるわけなんですけど、日本のお客さんは会話が全部解らなくても笑ったり、微笑んでくれて。反応もタイとはちがって控えめな感じでした。

--シャイなんですね。

イン:そうそう。タイ人のお客さんより、シャイなんです。それがかわいかった。
渋谷を歩いていたら、日本人のファンの方が気付いてくれたんですけど、その時も「あっ!」て、控えめに驚く感じで。とてもリスペクトした反応をしてくれるんですよね。日本人のファンは優しいなあって思いました。

--良かったー…日本人のファンの方が礼儀正しくて(笑)。

イン:とても礼儀正しいです。
日本のファンの方もインの渋谷のコンサートでハッピーな時間を過ごせたんじゃないかなって思います。タイ人のファンの方もたくさん来ていたので、タイスタイルのコンサート文化もちょっとだけ勉強になったんじゃないかな?

 

日本デビューを意識したのは4年前のタイフェスティバル

--インさんはいつ頃から日本でデビューしたいと考えていたんですか?

イン:もともと日本が大好きだったんですよ。

--えー!うれしい!

イン:子どもの頃からプライベートで何度も日本に旅行に来ていて、日本が大好きでした。
ただ、日本で仕事をしたいと思ったきっかけは4年前のタイフェスティバルのステージから日本のお客さんの反応を自分の目で見てからですね。
言葉の意味が分からなくてもエンジョイしてくれていて、この国でデビューしたいと思いました。
それから所属しているレーベルのチームからも「次に活動するならどこの国?」という機会をいただいて「じゃあ、日本!」と…。それで実現できた感じですね。

--所属しているMuzik Move自体が各レーベルとも個性的で多様性のあるアーティストを揃えていますよね。このコロナ禍でこれだけ躍進できる環境や、日本でのデビューの機会にしても、凄く恵まれた環境で音楽活動ができているんだろうなあって思っていました。

イン:そうなんですよ!とても自由にやりたいことをやらせてくれるレーベルです。

--20年以上、タイの音楽が面白い、と思って聴いてきたんですが、インさんが登場してきた時代あたりから、タイの音楽が急に多様化して、全体的にレベルアップした気がします。レーベルの影響も強いんでしょうね。

イン:わあ、ありがとうございます。光栄です!

 

新世代シティポップバンド、THREE1989とのコラボ「LAST TRAIN」

--THREE1989(スリー)とコラボレーションするきっかけは何だったんですか?

イン:Netflixで「テラスハウス」を見ていた時に、THREE1989のボーカルのshoheyが出演していたんです。
その時の彼のミュージシャンとしてのライフスタイルや、ライブのスタイルを見てから、曲を聴いてファンになりました。
丁度、日本でデビューする際に、日本のアーティストとコラボレーションする必要があったので、チームに相談したら、THREE1989とコンタクトを取ってくれました。
THREE1989サイドもOKだったので、今回のコラボが叶ったんです。

--希望通りの形の日本デビューになってラッキーでしたね。THREE1989は日本ではちょっと懐かしいシティポップをアレンジして、心地良いサウンドを作っている方たちですけど、このジャンルは好きだったんですか?

イン:インはもともとシンセポップというジャンルの曲で歌っているんですが、日本のシティポップはよく聴いていました。とてもユニークで心地よくて、興味がありました。

--「LAST TRAIN」のミュージックビデオは、懐かしい公衆電話やカセットテープが出てきて、シティポップが流行していたリアルタイムの時代に合わせていたことが印象的でした。

イン:あのミュージックビデオは「LAST TRAIN」ということで、徹底的に夜のシーンにこだわりました。
3年前に話が持ち上がって、本当は日本でTHREE1989と一緒に撮影する予定だったんですよね。
でも、新型コロナウィルスの感染拡大で日本に行けなくなってしまって、別々に撮影することになったんです。

--そうだったんですか!日本で撮影したミュージックビデオも見てみたいですねえ。

イン:プロデューサーがタイから指示を出して、日本サイドに「こんなシーンを撮ってほしい」とお願いして撮影したんです。タイでも日本の撮影現場と近い景色の場所で撮影して、2つの場所が繋がるようなイメージを狙いました。
実際に完成して「タイと日本は映像的にも相性がいいな」と思いました。

 

作品には常に自分らしさにこだわる

--そう言えばインさんはステージでも自分でキーボードを弾いてますよね。

イン:はい。

--作曲も手掛けることはあるのでしょうか?

イン:まだ100%自分で一つの曲を仕上げた経験はないのですが『Bliss』というアルバムで、1曲、プロデューサーと一緒に作りました。いつも共作と言う形ではありますが、自分らしさを入れるように努力しています。

 

日本デビューアルバム「bloom. 」がオリコンチャート15位

--日本デビューアルバム「bloom. 」がオリコンチャート15位でしたね。日本では時々、タイでは有名な方がデビューしますけど、15位までいけるのは、かなりの健闘だと思います。

イン:本当ですか?ありがとうございます。

--日本でデビューをしたということで、今後は日本での仕事も増えていくのでしょうか?

イン:まだわからないです…(笑)。この後の反響を見てから…期待してまーす(笑)。

--なるほど(笑)。日本のファンの皆さんの応援次第ですね!日本で活動するならどんなことをしたいですか?

イン:インの夢は日本でのミュージックフェスティバルで曲を披露することなんです。

--THREE1989と一緒に出演するような形なら、すぐにでも叶いそうですよね。

イン:まだそういう話はないですね。
でもバンコクで「LAST TRAIN」を披露したいなあ、という気持もあって、具体的な話ではないですが「バンコクで一緒にステージに立てたらいいですね」という話はしています。

--「bloom. 」は日本語の歌詞が多いですけど、日本語を覚えるのは大変だったでしょう?

イン:最初はタイ語で歌詞を付けて、日本語に翻訳してもらいました。
どこで区切ると自然かな?とか、自分で色々研究して練習して。11月15日の渋谷のコンサートが決まってからは、日本に住んだことのある友達に協力してもらいました。そこからは発音の練習も頑張りましたよ。

 

日本の全てが好き

--インさんは日本が大好きなんですよね。どんなところが好きですか?

イン:具体的には上げられないほど、日本の全てが大好きー(テンションが上がる)。
色々な都道府県に行ったんですけど、各都道府県全部に特徴と魅力があって、全く飽きないですね。食事は美味しいし、美術館のアートも素晴らしい。まだまだ何度でも日本を旅行したいです。

--東京や京都だけではなく、各都道府県の魅力まで知ってくれているなんて、日本人としてはとても光栄です。今回は少しは観光できる時間がありますか?

イン:今回は6日間しかいないんですよ。4日間は仕事(爆笑)。明日から観光しますよ。

--おっ?どこに行きますか?

イン:ディズニーランドに行きます!行ったことはあるんですけど、何度でも帰りたい場所です。

--日本人がタイに行くならどこをおすすめしたいですか?

イン:おー、難しいですね。そうですね…。
タイが好きな日本人にはバンコクとか大都市の観光地ばかりに行くのではなく、田舎の方に行ってほしいです。例えば北部のチェンマイとか。そこでも有名な観光地ではなくて自分でいろいろ歩いて、新しいお気に入りの場所を開拓してほしいですね。
そうそう、コロナ禍で観光客が減ったじゃないですか。
海や自然が今とてもきれいになっています。この前、コンサートでタイの南の方に行ったんですけれど、コロナ禍前では考えられないほど、海が澄み切っていました。自然の魅力を感じるなら、今がチャンスかも。

 

日本のファンにメッセージ

--最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

イン:まずは応援してくれてありがとうございます。
応援してくれている日本のファンの方の中には、初めて日本のステージに立った、4年前のタイフェスティバルから応援してくれている方もいます。
とても温かく迎え入れてくれて本当に感動しました。日本のファンの方とまた会いたいです。
実は今回『bloom.』は完売しました。でも、また再販します。タワーレコードで購入できるので、完売して購入できなかった人は買いに行ってみてください。
それから、他のタイ人アーティストが日本に来た際も、暖かく迎え入れてくれたら嬉しいな。

--今年のタイフェスティバルは残念ながらオンラインでしたが、タイのアーティストが沢山出演しましたよね。

イン:はい。インも出演しました。

--来年のタイフェスティバルが通常通り開催されたら、またステージで歌ってくれますか?

イン:絶対に!というか、呼ばれたら絶対に来ます。呼んでくれたらうれしいな。

--次に来日した時は、レベル違いのスーパースターになっていて、インタビューできなかったりして(笑)。

イン:そんなことないですよ。大丈夫です(笑)!またインタビューしてくださいね!

取材を終えて―――

日本のファンの控えめな優しさに感動したというインさん。
コンサートを含む駆け足での滞在となったものの、日本の全てが大好き、という彼女にとって、忘れられない滞在になったに違いない。
コロナ禍という近年まれにみる閉塞感と、エンターテインメントの苦境の中で、アルバムの『bloom.』の名の通り、力強く花開いた彼女。心地よい伸びやかな声と洗練されたサウンドで、苦しい時期のタイの皆さんに癒しを与えてきたに違いない。

もちろん、日本デビューを果たしたことで、日本での活躍も期待したいもの。好みにとらわれず心地よく聴けるアルバムなので、まだ聴いたことがないという人は、ぜひ彼女の世界観に触れてみてほしい。

取材・文/吉田彩緒莉

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Ink Waruntorn
1994年2月23日 バンコク生まれ
https://www.facebook.com/InkWaruntorn/
https://twitter.com/inkwaruntornp
https://www.instagram.com/inkwaruntorn/

 

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