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タイ警察中央捜査局(CIB)は、南部を走る一本の道路に静かに目を光らせていた。パッタルン県の41号線。白いピックアップが検問に差し掛かる。運転席の男は落ち着いているように見えた。だが、わずかな挙動の違和感があった。CIB傘下、警察道路部隊が停止を命じ、荷物検査に踏み切る。発見されたのは、黒いショルダーバッグ。その中には.38口径の回転式拳銃、実弾10発、そして沈黙だけがあった。
「これは自分のものだ。家から持ってきた」男はそう言ったかもしれない──そして「護身のためだった」と続けたかもしれない。だが、その言葉がどこまで真実を含んでいたのかはわからない。銃は無許可だった。登録もなく、携行証もない。たしかに事件は起きていない。だが、鋼鉄は移動していた。そして、それは十分すぎる理由だった。
それは未然に防がれた事件だったのか、あるいは起こらなかった犯罪の断片だったのか。果たして、その真偽を見極められるのは、天のみだったかもしれない。銃声は響かなかった。ただ、そこには“持ち運ばれた意図”だけが残された。
タイ中央捜査局(CIB)
プロフェッショナルで中立、国民と共に。
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