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タイ警察中央捜査局(CIB)は、ターク県を走る一本の国道にて、何かが通り過ぎる気配を感じ取っていた。高速道路12号線の、ただの一地点。そこを抜けた2台のピックアップトラックを、CIB傘下の警察道路部隊が停止させた。合図は静かだった。だが、止まった車内には6つの影。前者には中国人4人、後者にはタイ人2人が乗っていた。
検査の結果、4人の中国人はすべて、旅券も在留許可も持たぬ“ただの移動者”だった。後部座席に並んで座る彼らの足元に、目的地の名も、逮捕の兆しも記されていなかった。ただ一言、「雇われただけです」──運転していたタイ人はそう言ったかもしれない。そして、「報酬は一人あたり6,000バーツ」と続けたかもしれない。
それは犯罪だったのか、あるいは未遂だったのか。いや、そんな問いなど意味はなさない。誰も叫ばず、誰も逃げなかった。荷台は空で、発砲もなく、拘束は淡々と行われた。まるで、ただの道の途中で一時的に立ち止まったかのように。
現在、タイ人2人は外国人違法輸送の容疑で、中国人4人は不法滞在の容疑で、それぞれ取り調べを受けている。だがその記録に、彼らが何を目指していたのかは書かれていない。ただ「国道114〜115km地点にて発見」とだけ記されている。
彼らは国境を越えたのかもしれない──だがそれが希望だったのか、逃避だったのか、あるいは何でもなかったのか。果たして、その真偽を見極められるのは、天のみだったかもしれない。
タイ中央捜査局(CIB)
プロフェッショナルで中立、国民と共に。
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