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タイ映画「親友かよ」公開記念!主演トニー・アンソニー&ジャンプ・ピシットポン独占インタビュー

2025年6月13日 配信

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』で世界をあっと言わせたタイを代表する映画監督、バズ・プーンピリヤ氏の映画初プロデュース作『親友かよ(NOT FRIEND)』が、2025年6月13日より順次全国公開となる。
製作は「アジアのA24(米インディペンデント系エンターテインメント企業。オスカーに名を連ねる名作を数多く製作)」と称される映画会社GDH 559。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』『ハッピー・オールド・イヤー』『女神の継承』など数々の話題作を生み、『おばあちゃんと僕の約束』は第97回アカデミー賞国際長編映画部門ショートリスト選出というタイ映画初の快挙となっている。



監督はPalmyやWhal&DolphのミュージックビデオやCM制作で活躍するアッター・ヘムワディー氏。バズ氏から推薦で大抜擢されたわけだが、さすがバズ氏が見抜いた才能。この物語に何度も登場する言葉「空想は知識に勝る」が象徴するような、現実世界と空想世界が交差する後半は、結果的に主人公の可能性に余白を残し、今思い出しても鳥肌の立つような効果を生んでいる。

【STORY】
問題を起こし、高校3年生で転校したペーは、転校先の高校でジョーという少年と隣同士の席になる。明るく人懐っこいジョーはペーと友達になりたがるが、ペーは卒業までの短い期間に友達を作ろうという気はなく、ジョーに対して素っ気ない態度を取ってしまう。
しかし、そんなジョーが事故で亡くなってしまった。
ジョーが亡くなった数日後、ペーは短編映画のコンテストに入賞すると試験免除で大学に進学できるという話を聞く。大学入試に合格しなければ、父の家業である工場で働くことを命じられたペーは、これをチャンスと捉える。
ペーは自分をジョーの親友だと偽り「親友として生前ジョーが制作した短編ストーリーを映画化する」という学校でのプレゼンに成功。真相を知るジョーの本当の親友ボーケーや映画オタクたちと共に映画撮影を進めていく。
しかし撮影がクライマックスに近付くころ、ペーとボーケーはジョーの思いもよらない秘密を知る。

主演は『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』で主演コンビを務めた、トニーこと、アンソニー・ブイサレートとティティヤー・ジラポーンシン
同じ制作会社、しかも話題作の連続主演となり、最初から2人のキャストのみ決まっていたのかと思うほどのタイミングだが、アッター監督によれば、全くそんなことはなく、2人ともオーディションで選んだと言う。

そして冒頭で亡くなる役にも関わらず、最後まで生きているかのような存在感で物語に影響を与え続けるジョー役は、ジャンプことピシットポン・エークポンピシット。ドラマシリーズ『ラブ・バイ・チャンス2/A Chance To Love』に出演。その後『Why You… Y Me?』では自身のバンド「Evening Sunday」のリードボーカル役で出演している。

実は筆者、この映画の試写で見て、人がいるというのに嗚咽して泣いた。こんなことは生まれて初めてだった。しかもその嗚咽が止まらず困惑した。試写から3週間が経過している今も、ふと思い出すと嗚咽が込み上げてくる。
予告編のVTRを見ても、今も同じレベルで泣けてくる。
ジョーと言う人間の全てを、ペーが知っていく目線に完全に引き込まれており、今もジョーを探し、ジョーの生存を願ってしまい、はっと気付く。
「あれ?そうだ、映画の話だった。」

このような状態で、ペーとジョー、もとい、トニーことアンソニー・ブイサレートと、ジャンプことピシットポン・エークポンピシットの取材が決まった。
2人が揃うと泣く自信しかないのだが…。
しかし、ここは映画にも何度か出てくる「ジョーが生きている世界」だと思い、その喜びをかみしめつつお話を伺うことにした。

トニー=アンソニー・ブイサレート
โทนี่-อันโทนี่ บุยเซอเรท์   Tony-Anthony Buisseret
https://www.instagram.com/anthonybuisseret/
ジャンプ=ピシットポン・エークポンピシット
จั๊มพ์-พิสิฐพล เอกพงศ์พิสิฐ  Jump-Pisitpol Ekaphongpisit
https://www.instagram.com/pisitpol_j/

見事な変貌!爽やか善人『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』のマークとずるがしこい『親友かよ』のペー

ーー実はトニーさんには『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』の時に一度インタビューをさせていただいています。

アンソニー(トニー):ああ!本当だ(笑)!ありがとうございます。またインタビューしていただけて嬉しいです。

トニー=アンソニー・ブイサレート

トニー=アンソニー・ブイサレート

ーートニーさんは『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』のマーク役の後に『親友かよ』のペー役を演じたんですよね。
優しくて爽やかなマークと、小ズルいペーはかなりキャラクターが違うと思うのですが、演じ分けは難しくなかったですか?

トニー:『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』のマーク役はまず髪型から変えて役作りをしました。ヘアスタイルもダサくて(笑)、乗り気ではなかったんですけど「役者だし、仕方がない!」と、思い切って髪型を変えました。
ナコンパノムという田舎に住む少年の役だったので、なるべく太陽の光にあたるようにしましたし、現地の人と一緒に時間を過ごすようにしました。
マークは凄く優しくて、いい奴なんだけど『親友かよ』の主人公ペーは、生意気だし、ちょっとイヤな奴なので、キャラクターがはっきり分かれていました。演じ分けは意外と簡単にできたと思いますが、失うものは何もないという気持ちで挑みました(笑)。

ーートニーさんはいつ頃から俳優の仕事を始めたんですか?

トニー:CMのオーディションですね。最初は全く俳優になる気はなかったんですけど、そのオーディションに合格して俳優の仕事を始めました。
俳優と言っても当時は『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』と、この映画『親友かよ』の2作しか出演していない時期ですね。

シンガーも側面も。ジョー役のジャンプが生歌披露

ーージョー役のジャンプさんは、長編映画初出演ですね。これ以前はドラマシリーズに出演していたそうですが。

ピシットポン(ジャンプ):とは言っても脇役のひとりでした。ドラマ出演前は普通の学生だったんですけど、演じることには興味があって、ワークショップに参加したりはしていました。

ジャンプ=ピシットポン・エークポンピシット

ジャンプ=ピシットポン・エークポンピシット

ーーミュージシャンでもあるんですよね?バンドを組んでいて実際のバンドのボーカル役でドラマシリーズに出演したこともあるとか?

ジャンプ:え―?凄い。知っていてくれて嬉しいです(笑)。でも今はもうバンドは解散してしまって、みんなそれぞれ別の仕事で別の道を進んでいます。曲を聴いたことありますか?

ーーす、スミマセン、聴いたことはありません。

ジャンプ:実は日本語の曲もあるんですよ。だから日本の皆さんには聴いていただきたいです。

トニー:えー!ちょっと歌って聴かせて!

ジャンプ:♪君にふさわしいのは彼ではなくて、僕さ、笑顔を取り戻して。守り続けたい。♪

ーー凄い歌唱力(驚愕)!

ーータイのドラマシリーズ撮影現場と映画撮影現場は全く異なりますか?

ジャンプ:期間的にはドラマシリーズの方が映画より長いんですが、僕の出演していたドラマは、恋愛がテーマでちょっとファンタジーに近い感じだったんです。『親友かよ』は映画を通して一人の親友の人生を追うストーリーでした。撮影期間はシリーズより短いですが、キャラクターに入り込む時間が濃密だなと感じましたね。
僕はこの映画に出演する前は、他の撮影現場がどんなものか全く知らなかったんです。本当に勉強になりました。
プロデューサー、監督、スタイリスト、照明、他にもたくさんのスタッフさんたちがいるんですよ。その人たちの映画作りに対するパッションがすごい。もちろん共演者もなんですが「ああ、これが映画作りなんだ!」と思ったし、かなりインスパイアされました。

坊主頭にすることでジョーを知ることができた

ーージョー役であるジャンプさんがオーディションで一番最初に決まったそうですね。その時の気持ちは?

ジャンプ:まさか今回みたいな重要な役で出演できるなんて、思ってもいなかったです。
GDH559のオーディションを受けませんか?と言われた時は、本当に興奮しましたね。僕はGDH559の映画の大ファンだったんですよ。その時、本能的に僕は役
者の道に進むべきなのかも?と思いました。

ーー坊主頭役というのを知ってからオーディションを受けたんですか?

ジャンプ:ジョー役は坊主頭と決まっていたんですけど、やっぱり刈る時はちょっとショックでした。
坊主になったらどうなっちゃうんだろう(笑)。自分の顔と坊主頭が似合うのかな?なんて。でも坊主にしたことで、キャラクターが際立ちました。

ーー初めて映画を見た時のインパクトは、どうしてもジョーは髪型に目が行きますよね。それだけでもう、特別な役なのかも?って思いました。

ジャンプ:そうなんです。実際に映画を観た人も、なんでジョーは一人だけ坊主なんだろう?っていう所から始まって、なんでこんなに陽気なんだろう、なにか特別な人なのかな?って、興味を持ってくれたみたいです。

「親友かよ」出演者全員でビールでも飲みたい

ーー「親友かよ」の撮影が終わってから2人で会うのは久しぶりですか?

ジャンプ:トニー、いつぶりだっけ?すっごく久しぶりだよね?

トニー:うん、随分長く会ってないね。あれ?どこかのイベントで会わなかったっけ?

ジャンプ:あれ?あっ!違う違う、何かのプロダクションのパーティーで会わなかったっけ?それでも1年は会っていないよね。

ーー映画から離れて二人で、こうして久しぶりに会って『親友かよ』について話をするのはどんな気分ですか?

トニー:『親友かよ』ついて話すときは毎回とてもいい気分になりますね。それくらい、この映画の仕事現場が楽しかったんですよ。
『親友かよ』の撮影の後、自分も成長したけど、出演者のみんなも成長してるんですよ。つい2週間くらい前だったかな。フジ(劇中で映画オタクのグループとして撮影に参加する録音を担当する学生役)に会ったんだけど、随分背が伸びて変わっていたんですよ。あの時は眼鏡をかけていたけど、今はもうかけていなくて、背も伸びて。それになんと!恋人もできたって言っていましたよ!

ーーえー?すごく子供っぽい風貌の方でしたよね?

トニー:『親友かよ』の出演者のみんなに、凄く会いたいんですよね。一緒にご飯食べてもいいし、ビールを飲んでもいい。もちろん、忘れてしまったこともあるけれど、みんなの事を思い出すと、本当に心が温かくなるし、いい気分になります。

ーーみんなが懐かしくなるっていうのは、きっと、心の中までペーになり切っていたんですね。ジャンプさんの方はどうですか?

ジャンプ:みんなで全力を出して真剣に向き合った作品ですから、僕も毎回『親友かよ』の話をするたびに、嬉しいです。
さっきトニーが言ってたように、撮影が終わった後に、みんな自分のそれぞれの道で成長しているんだけど、また集まって話すと、凄く楽しい。何て言うんでしょう。映画の中の高校生時代に戻ったような気がしてしまうんです。
それぞれの俳優が今置かれている状況のフィルターとかは、全く関係なくて、この映画に関わった仲間ということで、仲良くしています。

ーーお2人がそんな気持ちのままでいてくれることが、とてもうれしいです。実は私、『親友かよ』を見てから3週間くらいたつのに、映画の事を思い出すと泣いてしまうんですよね。ジョーのことをペーやボーケーの目線で知っていった追体験をしたせいか、陽気で明るいジョーが持っていた別の側面を知って、失った悲しみが増していく。たまらなくジョーに会いたくなるんですよ。
だから私は今、この2人が並んでいるだけで泣いてしまうんですよね…(泣)。

トニー:ええええ(爆笑)?don’t cry!don’t cry!

ジャンプ:そんなにこの映画と、ジョーを好きになってくださって嬉しいです。

トニー&ジョーのファーストインプレッションは?

ーー失礼いたしました。初めて会ったときのお互いの印象はいかがでしたか?

トニー:そんなにこの映画が好きだったら、他のインタビューとは違う答え方をしますね。

ーーわあ!やった!ありがとうございます!

トニー:男同士は通常こういうことは褒め合わないんですけど、ジャンプを初めて見た時には「こっ、こいつイケメンだな!」と思いました。

ジャンプ:(爆笑)…。

 

トニー:僕は丁度その時『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』の撮影時で髪を短く切っていて、東北地方の若者という役作りのために肌は褐色。しかもニキビまで出ていたんですよ。イサーンの若者っぽく、オートバイも乗りこなしているワイルドな状態。
そんなちょっと格好悪い姿で『親友かよ』のオーディションのために会場で待っていたら、ジャンプが颯爽と会場に入ってきたわけですよ(笑)。

ーートニーさん的には今のような男前ではなかったというか、外見ではちょっと自信がない状態だったんですね。

トニー:そうなんです。もう、ジャンプと僕は全然違う訳ですよ。ジャンプは凄いオーラなんですよね。当時の僕と違って肌は白いし、イケメンだし、すごく魅力的な笑顔だし。何だか彼があのオーディション会場に入ってきた時、スローモーションの映像を見ているようでした。

ーーあははは。映画のワンシーンみたいですね。

トニー:ただ、オーディションの時に「本当にこの人がジョーの役をやるのかなあ?」っていうふうに不思議に思いました。理由は僕はジョーがどんなキャラクターなのかということを知っていたからです。
ジョーはいつも明るくて、テンション高め。ちょっとうざいな、っていうくらい「キャッキャッキャッ」っという感じの役柄だったのに、ジャンプ自身は声優のように魅力的な声をしていて、イケメン。全然イメージと違った(笑)。
それなのに撮影が進んだら、ジャンプほどうまくジョーを演じられる俳優は他にいなかっただろうなって思いました。

ーージャンプさんの方はどうでしたか?

ジャンプ:僕がトニーと出会ったオーディション会場に行った時は、すでにジョー役が決まっていたんですよ。だから誰がペー役になるのかな?ってドキドキしたんですよね。トニーと最初に会った時は、ああ、なんか自信がなさそうな子がいるなと思ったんです。高校を卒業したばっかりっていうのもあるのかな?でも、ハーフ顔だし、見た目がいいなとは思いました。

ーーへぇー!

ジャンプ:いや、トニーのことをバカにしているわけではないですよ(笑)。内心ちょっと勇気づけてあげようって思いました。ジョーだったら、ペーにそうすると思ったからです。
だから自分からトニーにどんどん話しかけていきました。その中で、トニーは凄く才能があるんだけど、自信がないだけなんだなって思いました。
当時トニーは最高に良い作品にしたいと思う気持ちが人一倍強くて、自分にプレッシャーをかけすぎていたんですよね。

トニー:ははははは(笑)。

ジャンプ:ただ、撮影に入ったら、どんどんトニーらしさが出てきたんですよ。トニーの自分らしさをペーの中に表現できるようになって、見ていても「演技がよくなってるなー」って思っていました。
トニーが精一杯ペーになろうとしていた姿がすごく印象的です。ペーは人間的な役だし、あの年齢で人生を真剣に考えなければいけない。そんな状態で、友達の秘密を知ってとても混乱する体験をします。
それにペーはあの映画の全てのシーンに出演しているでしょう?役の難しさをよく理解していますから、トニーを尊敬しています。

それぞれの役は自分に似ている?

ーーちょっとこれまでびっくりしながらお話を聞いていたんですけど、ジャンプさんは、映画の中のジョーと同じ話し方をするんですね。ジョーの話し方の部分は、演技ではないんですね。

ジャンプ:はははは(笑)…。それは僕とジョーが持っている同じ要素なんでしょうね。僕とジョーは全く同じではないけれども、ジョーを演じることで、自分の中にあるジョーに近い部分を勇気を持って表現しました。

ーーしゃべり方以外にはジャンプさんとジョーの同じ要素や、似ている所はありますか?

ジャンプ:最初に台本を読んだ時、ジョーのことがよく理解できるなって思ったんです。友情を大事にするところや、真摯なところ、陽気な性格も僕自身に似ているかな。そう思いました。

ーー逆にペーとトニーさんは、どうなんでしょう。ペーはすごく感情的で、パニックになるような所もありますよね。映画のキャラクターとしては凄く面白かったんですけど、今、会話しているトニーさんを見ていると、全くその要素を感じないので、凄く頑張って役作りをしたんだろうなと思っていたんですよ。

トニー:あー、確かに。感情の起伏の激しさは、ペーにはあるけど、僕にはないものですね。
ペーはまだ若いのに、ずっとプレッシャーをかけられてきた。前の学校で彼女に振られて、転校するハメになったり、父親に「大学入試に失敗したら、自分の工場で働け」と言われてきました。それから家に工場が併設されているから、洗濯物を干していると工場の匂いが制服にしみついてしまって、それを彼女に指摘されたことに、もの凄いコンプレックスがあったりする。
でも、そういう彼だからこそ、幸せな時はものすごく幸せを感じるし、ちょっと何か起こるとパニックになる。
そういった一つひとつの出来事を経て、彼は成長していくんでしょうね。
ただ僕とペーが似ているポイントもありますよ。
何かを成功させたいと頑張る情熱は似ていると思います。それからペーの友達の愛し方なんですけれども、彼はすぐには人を愛せないんですよ。でも、一緒に過ごしていくことで、愛するようになる。そこが僕と似ているところだと思いました。

ーー撮影時は二人とも高校生ではなかったんですよね?

トニー:高校を卒業したばかりで大学入試に向けて準備をしていた時期でした。

ーー映画の中で入試や卒業後のシーンがありますが、その頃のペーの時期と被る感じですね。

トニー:そうですね。

ーージャンプさんの方はトニーさんより4歳年上だとお聞きしたんですけど、どうですか?カルチャーギャップ的なものは感じませんでしたか?

ジャンプ:実はそれが僕が一番心配していたことでした。
だって、僕はトニーより4歳年上で、僕の妹はトニーとほぼ同い年。だから最初は彼を弟のように感じていたんですよ。
でも、そう思った瞬間、ジョーがペーと接するシーンは全く変わったものになってしまうでしょう?だからなるべく「自分は同世代の友人なんだ!」と思って演じるようにしました。

ーー自然にできましたか?

ジャンプ:難しかったですね。でも頑張りました。
時には今どきの若者の気持ちっていうのを、実感することがちょっと難しかったこともあります。それともう一つ。トニーはインターナショナルスクールの出身で、ハーフなので、僕には完全に分からない部分っていうのも若干はあったと思います。でも演技上、同世代としてトニーを理解しようとすることが、自分にとってはとても楽しかったです。

映画の中では次々と後ろめたさが明るみに。演じた2人にはそんな陰の部分はあるのか?

ーーこの物語なんですけど、主役のトニー、ボーケー、ジョーともに、人に言えない後ろめたさを持っている事が判明していくじゃないですか。
トニーさんとジャンプさんにも、「ああ、あの時こんなことしちゃったけど、謝れたらいいのに」みたいに思う後ろめたさっていうのはあるんでしょうか。人って多かれ少なかれ、みんな持っているように私は思うんですが。

2人:えー!

トニー:この映画の中のことじゃなくて僕自身のことですよね(笑)。

ジャンプ:トニーに先に言ってほしいなあ(笑)。言えることを言えば良いんだってば(笑)。

一同:(爆笑)…。

ジャンプ:あ、じゃあ僕が先に言います(笑)。特に誰に対してというわけではないんですけど、僕自身パーフェクトな人間じゃないので、誰かにずっと好きでいてもらうということが難しいんです。

ーー正直ですねえ。

ジャンプ:いやー、何て言うんでしょう。例えば自分のストレスや不満を他の人に押し付けてしまう時がありました。それと、自分の勝手な期待を他人に押し付けることもありましたね。ああ、なんでそんなことをしてしまったんだろう?と今も思い出すことがあります。
もし時間を巻き戻せたら、その時に離れていった人たちと、良い関係を取り戻せたらいいなあと思うことがありますよ。

トニー:僕も思いつきました(笑)。僕の場合は人に心を開くことが難しくて、今でも毎日努力しています。
僕は子どもの頃、バンコクにある、タイ人が全くいないフランス系の学校に通っていたことがあるんですけど、先生や母がいつも言っていたのは「常にリーダーシップを取れ」っていうことでした。

ーーそうなんですか?人によっては「え?何この人」って思っちゃうこともあるかもしれませんね。今は全くそんな感じはありませんけど。

トニー:僕自身がリーダーシップを取るような位置にいないと、相手に対して心を開けなかったんですよ。だから当時は僕も先生や母が言っていることは正しいと思っていました。
でも、成長していく中で沢山の人に会って、必ずしもそれが正しい考えではないし、いつも当てはまる方法ではないことを学びました。
今はそういった面はかなり改善されて、素の状態で人に心を開けるようになってきたと思います。

ーータイの映画俳優さんでも、あの時どうしてあんな態度取っていたんだろうとか、時間を戻して謝りたいみたいなことは、心の中に抱えているんですね。

映画を見る人は注目。「ずっとジョーがいる」効果抜群の遺影

ーー他の観客も予告編で見たりして相当気になっていると思うんですけど、ジョーの遺影が凄い存在感なんですよね。ペーが映画を作ろうと思いつくシーンや、偲ぶ会。ずっと「にかっ!」って笑っているんですよ。
あの写真はすごく映画の中で大事なアイテムですけど、撮影の際、何か指導が入ったんでしょうか?

ジャンプ:写真を撮った時のことは覚えてます。
監督がふざけて撮影しました。でも、監督は僕に「ジョーのライフスタイルを撮影する」って言ってて、何となく撮られていたんですよ。まさか遺影に使われるなんて夢にも思っていなくて。

一同:…(爆笑)。

ジャンプ:後でその写真が遺影に使われていたので、ショックを受けました(笑)。でも映画を見るとあの写真の存在はやっぱり面白いですよね。
でもまあ、人は幸せな瞬間を保存したいから写真を撮っているわけであって、どの遺影も遺影に使われることを考えながら撮影はしていませんよね(笑)。割り切りました。

ーーあの遺影は持ち帰ったりはしなかったんですか?

トニー:…(爆笑)

ジャンプ:僕は持ち帰ってないです(笑)。多分アッター監督か誰かが持ち帰ったと思うんですけど、僕はスマホに残しました。

今も泣けてくる。2人が大事にしているあの名シーン

ーー気に入っているシーンを教えて下さい。

トニー:実は撮影中は何とも感じなかったシーンがあります。ただ空を見つめるシーンなんですけど、初めて映画館で見た時に、そのシーンを見て涙が止まりませんでした。
空の向こうにある、他の星の別世界を眺めた時に、ジョーは車に追突されずに生きている。ペーは、ジョーが死んでいなかったらどんな状況だったんだろうとか?僕たちは親しくなっていたのかな?と考えます。でも、僕はペーとしてではなく、僕自身でそう考えて泣きました。

ーーああっ、あのシーンですよね。「空想は知識に勝る」のセリフの後に、ペーが空を見上げる所。私も…(嗚咽)泣きまし…た(涙)。

ペー:ああ!また泣いちゃった(爆笑)。

ーー失礼しました。ジャンプさんはどうですか?

ジャンプ:僕はバスでジョーとペーがしっかり話すシーンかな。ジョーがペーに秘密を打ち明けるシーンです。撮影中は何とも思わなかったんですけど、映画を見て号泣しました。マネージャーが「そこまで泣く?」って言って引いていました(笑)。

ーーなんだ、主役の2人も号泣したんですね。私だけ変じゃなくて良かったです。

ジャンプ:そうですよ。だって、あのシーンにはやっぱりすごく意味があります。ペーは冒頭でボーケーに「本当は親友じゃないくせに!」と言う感じで責められますけど、本当はあの時、ジョーにとったら、ペーは親友になっていたんです。
でも撮影中はそのことが全く見えていませんでした。

ーーあのシーンは冒頭につながるから、映画を見ているとジョーが数十分後には死んでしまうことがわかりますよね。めちゃくちゃ切ないんですよね(涙)。

これから「親友かよ」を見ようと思っている皆さんへ

ーーいよいよ6月13日(金)から日本で全国公開されていきます。2人から皆さんにメッセージをお願いします!

トニー:じゃあ僕が先に言うから、最後にジャンプがきれいにまとめてくれるよね?

ジャンプ:(笑)…。

トニー:『親友かよ』よろしくお願いします。見ていただいて気に入ってくれると嬉しいです。俳優もスタッフも全員で精一杯頑張って撮影しました。出演している俳優たちもそれぞれの場所で活躍しているので、全員の応援をよろしくお願いいたします。

ジャンプ:ほぼトニーが言った事と同じなんですけど、この映画を見て気に入ってもらえたら嬉しいです。出演者全員の応援、よろしくお願いいたします。
監督は脚本を書いている時は「この映画、本当にどうなるのかな?」って思っていたらしいです(笑)。でも素晴らしい映画になりました。そんな監督の事もよろしくお願いいたします!みんなで映画館に見に来てくださいね。

ーーありがとうございます!コップンカー!

取材を終えて

転校前のできごとから人に心を閉ざしていた主人公ペーの心が、映画制作を通して変わっていく。
しかし、映画制作を進めれば進めるほど、知りたくなかったことを知ることになる。
自分こそ本物のジョーの親友だというボーケーにも、ジョーに対して後ろめたさが…。そして、当のジョーにも大きな隠し事があった。
その隠し事が明るみになったことで生まれる様々な葛藤や危機。ペーは現実から逃げるように、もしジョーが生きていたら、と思いを馳せる。
そしてやっと気づく「ほんとうの親友とは何か」。

心に一点の曇りもない人間などこの世にいない。
「あの時、友達にああ言ったまま、別れてしまった」
「イヤなことをしてしまった。でも、謝りたい」
「あの時はああ言ったけど、本当は違う」
主要キャスト3人の姿に、誰もが最も多感だったあの頃を思い出し、心に引っかかっているあんなことやこんなことをやり直したいと思いながら、あの頃には二度と戻れないと悟る。
そんなノスタルジーと、「今、もう一度ジョーに会いたい」というクラスメイト全員の思いが、まるで自分のことのように感じる。

この日、主演の2人を前に、やはり映画を見た時の感情が込み上げてきてしまったが、やはりジョーもペーも映画の中にしか存在しないことを実感させてもらった。
それだけ観客をスクリーンの中に引きずり込んでしまう名演、そして何度思い出しても泣けてくる『親友かよ』という名作。
この没入感を、一人でも多くの方に味わっていただきたい。恐らく、映画館を出た瞬間、たまらなくジョーに会いたくなるはずだ。

[取材・文・撮影:吉田彩緒莉(Saori Yoshida/Interview・text)]
[通訳:高杉美和]

 

親友かよ

監督・脚本:アッター・ヘムワディー
プロデューサー:ワンルディー・ポンシッティサック、バズ・プーンピリヤ(『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』『プアン/友だちと呼ばせて』)
出演:アンソニー・ブイサレート、ピシットポン・エークポンピシット、ティティヤー・ジラポーンシン
製作:GDH 559 Co., Ltd. 制作:Houseton 英題:NOT FRIENDS 原題:เพือ$ น (ไม่) สนิท
字幕翻訳:橋本裕充 字幕監修:高杉美和 協力:大阪アジアン映画祭 後援:タイ国政府観光庁 配給:インターフィルム
<2023年/タイ/タイ語/130分/1.85:1/5.1ch/DCP>
©2023 GDH 559 AND HOUSETON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:notfriends.jp

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