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タイ商業・工業・金融合同常任委員会(JSCCIB: The Joint Standing Committee on Commerce, Industry and Banking)は2025年6月4日、2025年のタイ経済成長率予測を1.5〜2.0%に引き下げたと発表しました。景気の勢いが弱まっていることを受け、4月時点の2.4〜2.9%、5月時点の2.0〜2.2%から、2か月連続の下方修正となります。
委員会は、世界経済の減速や地政学リスクの高まり、アメリカの追加関税措置などによる不確実性の増大を指摘。国内では民間消費と投資の停滞、中国人観光客の回復の遅れなどが足を引っ張っていると説明しました。
2025年第1四半期の経済成長率は前年比3.1%となりましたが、これは政府投資の一時的な増加に伴うもので、基礎的な成長力は2.1%程度と見られています。民間投資は引き続き縮小傾向にあり、輸出も前年比15%以上伸びた一方で、製造業の成長は0.6%にとどまりました。在庫の取り崩しによる輸出が中心で、生産が追いついていない実態が浮き彫りとなっています。
JSCCIBは、2025年後半の経済成長率が1%を下回る可能性にも言及しており、それを回避するためには迅速かつ的を絞った経済対策が必要だと訴えました。1.57兆バーツ規模の景気刺激策については、「少なくとも70%を上半期中に執行すべき」と強調。また、長距離路線からの観光客(ロングホール市場)への訴求を強化し、中国依存からの脱却を急ぐよう提言しました。
加えて、委員会は輸出の中身にも懸念を示しました。現地部品の使用率が低い「名ばかりの国内生産」や、再輸出(リ・エクスポート)の増加が目立ち、GDPへの波及効果が乏しいと分析。輸出入データの連携不足によって、実態把握と政策対応が難しくなっていると指摘しました。
また、為替についても懸念を表明。バーツはこの1か月で急速に上昇し、1ドル=32.5〜32.7バーツの水準となっています。近隣国(ベトナム、シンガポール、中国)と比べて上昇幅が大きく、タイの輸出競争力を損なう要因になっていると述べました。その上で、バーツ高によってエネルギーや農業原材料などの輸入コストが下がっている点を、製造業や消費者にしっかり還元する必要があると提言しています。
企業支援策としては、事業用電力契約にかかる保証金の引き下げを提案。中規模・大規模事業者、ホテルや賃貸住宅業などの第3〜第5種の電力使用者に対し、現在「0.8倍」に設定されている保証金係数を「0.5倍」に緩和するよう要請しました。これにより総額3,000億バーツ以上とされる保証金の一部を返還し、企業の資金繰りを支援する狙いです。
さらに、政府の債務救済制度「クン・スー・ラオ・チュワイ(คุณสู้ เราช่วย)」の登録期間延長と制度の第2フェーズについても支持を表明。返済困難者への柔軟な支援と同時に、3年後の自立支援や再就労につながる施策が不可欠だと述べ、短期的な対応だけで終わらせないことの重要性を強調しました。
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