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タイ中部ナコンパトム県の有名寺院「ワット・ライキン」で2025年5月17日、寺の資金およそ3億バーツ(約13億円)を不正に流用していたとして、元住職の男が逮捕されました。事件の背後には、警察官による約200日間にわたる“寺男”としての潜入捜査があったのです。
この極秘任務に挑んだのは、タイ警察犯罪抑制課(CSD)に所属するニティトーン・プラチャンカンチャナ警官<階級はร้อยตำรวจเอก>。通称「プーコーントン(ผู้กองธร)」として知られる彼は、2024年10月ごろから寺に身を置き、日々の雑務――掃除や草取り、椅子運びなど――を黙々とこなしながら、内部から証拠を積み上げていきました。
捜査の結果、寺の資金は一度、元住職の個人口座を経由し、28歳の女性のもとへと送金されていたことが発覚。その女性は、過去にオンラインギャンブルサイト「Lagalaxy911」に関連して逮捕された経歴があり、今回も何らかの関与が疑われています。確認された時点で、少なくとも3,100万バーツが女性の口座に流れていたことが分かっています。
容疑者である元住職ヤエム・インクルンカオ(แย้ม อินกรุงเก่า)容疑者は、5月16日に自ら出頭。仏像の前で「還俗(僧籍離脱)」の儀式を行い、正式に俗人の身となりました。タイでは、現役の僧侶に対して原則として逮捕や勾留を行うことができないため、この還俗を経て初めて、法的手続きを進めることが可能になったというわけです。
任務を終えたニティトーン警官は、翌17日、制服に身を包み再び寺へ。今度は捜査官として、捜索令状を読み上げました。“寺男”として潜入していた男が、その翌日に堂々と正体を明かす展開に、現場では驚きの声が上がったといいます。
200日にも及ぶ忍耐と潜入。その執念が、仏の顔をかぶった巨悪をあぶり出しました。
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