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【2025年5月2日】タイ東北部ムクダハン県で、牛肉を加熱せずに食べたことが原因とみられる炭疽(アントラックス)感染が発生し、1人が死亡、2人の感染が確認されています。さらに、感染が疑われる3人が新たに報告されており、現在ムクダハン病院で治療を受けながら検査結果を待っている状況です。
現地を視察した保健省疾病管理局のディレック・カムペン副局長によると、当局はすでにリスクのある3つの村において合計377人を対象に健康スクリーニングを実施。内訳は、亡くなった感染者と一緒に牛の解体に関わった人28人、生肉を摂取した人232人、同じ村で接触した人117人となっており、全員に予防的な抗生物質「ドキシサイクリン」の服用が行われました。今後60日間にわたり、地域の保健ボランティア(アオソモー)による健康観察が続けられる予定です。
一方、畜産局も感染源の封じ込めに乗り出しており、半径5キロ圏内で1,222頭の牛に対してワクチン接種を計画。このうち124頭にはすでに抗生物質が投与されました。また、地域一帯で消毒作業が実施され、家畜の検体も採取済みです。家畜の域外移動を防ぐために、近隣4つの郡・県との境界には移動監視ポイントが設置されました。
当局は、牛肉や臓器などの未加熱摂取を控えるよう住民に強く呼びかけるとともに、祭事などでの屠殺行為についても制限を設けるなど、感染拡大の防止に努めています。
■炭疽(Anthrax)とは
炭疽は、炭疽菌(Bacillus anthracis)に感染することで発症する病気です。人から人へ直接うつることはありませんが、炭疽に感染した動物やその肉・臓器・皮・毛などとの接触や摂取によって感染します。
主な症状と種類:
皮膚炭疽:1~7日間の潜伏期の後に痒み、イボ、水ぶくれ、潰瘍、黒いかさぶたと進行し、発熱や頭痛を伴うこともあります。治療しない場合の致死率は約20%。
腸炭疽:嘔吐、発熱、激しい腹痛、血便など。致死率は約50%。
肺炭疽:発熱、咳、呼吸困難などの症状があり、致死率は90%にのぼる極めて重篤なタイプです。
治療と予防:
治療には抗生物質が有効で、早期の投薬により回復が可能です。ワクチンも存在しますが、一般的には副作用の懸念などから使用されることは稀です。未処理の動物製品には決して触れず、肉は必ず加熱調理してから食べることが推奨されています。
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