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【2025年6月23日】タイ国政府観光庁(TAT)はこのたび、「再生型ツーリズム(Regenerative Tourism)」という新しい観光の考え方を打ち出しました。これは、従来の“害を与えない”ことを目指すサステナブル・ツーリズムを一歩進め、旅行者が積極的に“良い影響”を残していくことを目指す取り組みです。
再生型ツーリズムでは、自然環境の修復や生物多様性の回復、そして地域社会の再生が重視されます。観光客もその過程に参加し、旅そのものが地域や自然を支える活動になります。
たとえばタイ北部のチェンマイでは、旅行者が伝統的な稲作体験に参加できるプログラムが行われており、地元農家を支援しながらタイの農業文化を学ぶ機会となっています。南部ではマングローブ林の再生プロジェクトが展開され、観光客が木を植える活動に参加し、地域の指導者から海洋環境について学ぶことができます。
東北部ブリラム県の「湿地とサルス・クレイン学習センター」では、絶滅が危惧されていたツルの一種「サルス・クレイン」の保護と繁殖が進められています。ここでは100羽以上のツルが自然に戻されており、観光客は彼らの生活を観察しながら、湿地保全の重要性を知ることができます。
また、宿泊施設も環境保全に積極的です。東部トラート県のクット島にある高級エコリゾート「Kiri Private Reserve(旧Soneva Kiri)」では、ゼロ・ウェイストを掲げ、地元住民と連携した教育プログラムや再生可能エネルギーの導入を進めています。
工芸品の振興も再生型ツーリズムの重要な柱です。チェンマイのサンデー・ウォーキング・ストリートでは、地元の職人が作った手工芸品が並び、観光客は量産品ではなく地域文化を感じる一品を手にすることができます。
海洋や野生動物の保護活動も進んでおり、カオソック国立公園では象の保護、アンダマン海ではサンゴ礁の再生や希少生物の保全が行われています。これらの活動にも観光客が参加できる仕組みが整えられています。
TATは「7 Greens」キャンペーンを通じて、ホームステイや地元食材を使った食事体験など、環境負荷の少ない観光スタイルを提案しています。観光を通じて旅行者が学び、行動することが、タイの自然と文化を守る力となっているのです。
かつて観光客の集中によって閉鎖されたピピ諸島・マヤベイでは、現在は入場人数を制限し遊泳を禁止することでサンゴ礁が回復。再生型ツーリズムの成功例として、世界の注目を集めています。
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