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バンコクの慈善団体「Bangkok Community Help Foundation(バンコク・コミュニティ・ヘルプ財団)」は、長年タイで暮らしてきたアメリカ人男性リックさん(78歳)に対する支援の経緯を報告しました。経済的困窮の末に路上生活を送っていたリックさんは、現在、市民の善意と財団のサポートにより、再び温かい寝床と医療支援を受けています。
リックさんは30年前にタイへ移住し、当初はロンドン・タイムズのジャーナリストとして活動。その後、バンコクでメディア関連の事業を起業し、一時は約80人の従業員を抱えるまでになりました。しかし、事業の失敗をきっかけに生活は一変。2025年4月には自殺を考えるまで追い詰められていたといいます。
リックさんが同財団と初めて接触したのは4月26日。一度は支援施設を訪れたものの、「友人がいるから大丈夫」とその場を離れました。しかしその17日後、再び連絡が入り、歩行も困難な状態で戻ってきました。糖尿病を患っていたリックさんは、路上でバイクにはねられ、足に重い怪我を負っていたのです。
財団スタッフが駆けつけたのは、リックさんが「Bangkok Community Help」と名を挙げてから20分後。寝たきりとなった彼を抱え、洗髪やシャワーを済ませ、ベッドを整えました。リックさんは何度も「ありがとう」と繰り返し、安堵の表情を見せたといいます。
そして翌日の5月15日、近隣のクリニックで受診したところ、担当医から「今すぐ病院へ搬送すべき緊急事態」と診断され、チュラロンコン病院へ。血圧は危険な水準にまで低下しており、足には壊死が進行。医師団からは切断手術の可能性も告げられましたが、リックさんは「残せる部分は残してほしい」と訴えました。
その日の夜7時半、リックさんは手術室に入り、感染部の切除手術を受けました。現在も経過観察が続いています。
リックさんは手術直前、「この40日間で人の温かさを思い出した」と語っています。バーガーキングでポテトを差し出してくれた見知らぬ外国人、何も言わず数バーツを手渡した市民たち――100人以上の善意が、彼に「生きる力」を与えました。
Bangkok Community Help Foundationは「バンコクの路上は、78歳の人が生きる場所ではありません。けれどこの街の人々は、彼に“助け”だけでなく、“希望”を与えてくれました」と結びました。
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