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名城大学の研究チームが、タイの温泉に生息する微生物から、これまでにない構造を持つ天然のサンスクリーン物質を発見しました。紫外線カットだけでなく、高い抗酸化作用と安定性を備えており、次世代のスキンケアや機能性食品への応用が期待されています。
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名城大学大学院総合学術研究科の景山伯春教授、薬学部の原脩教授らの共同研究グループは、タイのラーチャブリー県にある温泉から単離された「シアノバクテリア(ラン藻)」に注目。過酷な環境で生きるこの微生物が、独自の生存戦略として作り出している新物質「GlcHMS326」を特定しました。
この物質は、天然の紫外線吸収剤として知られる「マイコスポリン様アミノ酸(MAA)」の一種ですが、既存のものとは一線を画す特徴を持っています。
今回発見された「GlcHMS326」の最大の特徴は、シアノバクテリア由来としては世界で初めて「グリコシル化・ヒドロキシ化・メチル化」という三重の化学修飾が施されている点です。
解析の結果、この物質は紫外線(UV-A/UV-B)を浴びたり、塩ストレスに晒されたりすることで生産が活発になることが判明。さらに、強力な抗酸化作用を持ちながら、極めて高い安定性を維持することが確認されました。

近年、化学合成されたサンスクリーン剤による環境負荷が課題となる中、天然由来のMAAは「肌にも環境にも優しい素材」として世界的に注目されています。
今回の成果について研究チームは、紫外線防御と抗老化(アンチエイジング)を両立する次世代スキンケア製品や、体内から酸化を抑える機能性食品への応用が期待できるとしています。
本研究成果は、2025年12月2日付の国際科学雑誌「Science of The Total Environment」に掲載されました。過酷な温泉地で進化した微生物の力が、私たちの美と健康を守る新たな鍵となるかもしれません。
【詳細情報】
・掲載雑誌: Science of The Total Environment
・論文タイトル: Discovery of a novel natural sunscreen from thermophilic cyanobacteria with a potentially unique biosynthetic pathway and its transcriptional response to environmental stresses
・著者: Sasiprapa Samsri, Taiki Aono, Hakuto Kageyama, Rungaroon Waditee-Sirisattha 他
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