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タイは、世界のレアアース(希土類元素)市場で急速に存在感を高めています。米国地質調査所(USGS)やInvesting News Networkの2024年データによると、タイの年間生産量は約1万3000トンに達し、世界第6位の生産国となりました。前年比で261%の増加という、著しい伸びを見せています。2025年10月28日にThe Nation Thailandが伝えています。
主な鉱床地帯として注目されているのは、東北部のナコンラチャシマー県(コラート)からブリラム県にかけての地域です。地質調査の結果、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、ジスプロシウム(Dy)、イットリウム(Y)などの希土類元素を多く含む堆積層が確認されています。これらの元素は、電気自動車(EV)のモーターや風力発電機、半導体、スマートフォン、衛星システムなど、現代のテクノロジー産業を支える不可欠な材料です。
国内では、ナコンラチャシマー県にある「ネオ・マグネクエンチ」工場が、EVや電子機器向けの永久磁石を製造する重要拠点として稼働しています。この施設は、アセアン地域におけるレアアース供給網の中核を担っており、タイが地域の「レアアース供給ハブ」として台頭する象徴的な存在となっています。
また、中国のBYDが約17億バーツ(約4億8600万ドル)を投じてEV工場を建設するなど、海外企業の投資も相次いでいます。
The Nation Thailandによりますと、タイ政府はバイオ・サーキュラー・グリーン(BCG)経済モデルやEV産業促進策を通じて、レアアース資源を国内で有効活用する方針を掲げています。一方で、採掘から精製、製品化までの一貫体制を構築できるかどうかが今後の課題とされています。単なる「原料供給国」から、付加価値を生み出す「製造ハブ」へと進化できるかが注目されています。
世界のレアアース生産ランキング(2024年・USGS)
1位 中国:27万トン
2位 アメリカ合衆国:4万5000トン
3位 ミャンマー:3万1000トン
4位 オーストラリア:1万3000トン
5位 ナイジェリア:1万3000トン
6位 タイ:1万3000トン
7位 インド:2900トン
8位 ロシア:2500トン
9位 マダガスカル:2000トン
10位 ベトナム:300トン
タイは短期間で欧州やアジアの複数の国々を上回る生産量を達成し、世界で最も成長の速いレアアース生産国のひとつとなりました。今後は、経済発展と環境保全の両立をどのように実現していくかが焦点となります。
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