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タイ国立公園・野生動植物保全局は2025年10月8日、絶滅危惧種であるオオサイチョウ(英名:Great Hornbill、タイ語名:นกกาฮัง=カハン)のつがい1組を、チェンマイ県のチェンダオ野生動物保護区に放したと発表しました。チェンダオでの放鳥はこれが2組目で、20年以上前に姿を消したオオサイチョウの再導入を目的としています。
今回放されたのは、オスの「カムライ(กำไล:ブレスレットの意味)」と、メスの「ソーイ(สร้อย:ネックレスの意味)」のペア。2羽は事前に長期のペアリングと環境適応訓練を受け、かつてオオサイチョウが最後に確認された地域に放たれました。
このプロジェクトは、国立公園野生動植物保全局、カオキアオオープン動物園、ホーンビル研究財団の3者の協力によって実施され、長年失われていたオオサイチョウの個体群を再生し、北タイの生態系の回復を目指す取り組みです。
オオサイチョウはタイ国内で最大のサイチョウであり、森の生態系において“種子を運ぶ鳥”として極めて重要な役割を果たします。果実を食べて種を遠くに運ぶことで、森林の再生と多様性を支えています。しかし過去には、違法狩猟や森林伐採によって急速に数を減らし、チェンダオを含む多くの地域で姿を消しました。
チェンダオ野生動物保護区は、熱帯山地林や混交林が広がる自然豊かな環境で、果実などの餌も豊富です。職員による監視体制も整っており、オオサイチョウが安全に生息・繁殖できる条件を備えています。
また、今回の2羽には発信機が取り付けられ、行動範囲や適応状況を継続的にモニタリングします。得られたデータは今後の保全活動や再導入プログラムの改善に役立てられる予定です。
国立公園・野生動植物保全局は、「今回の放鳥は単なる動物の再放逐ではなく、北部森林の生態系バランスを取り戻す重要な一歩」と説明。公的機関、民間、研究団体が一体となった協力体制の成果だとしています。
タイではオオサイチョウは“森の守護者”とも呼ばれる象徴的な鳥。その力強い羽ばたきと鳴き声が、再びチェンダオの森に響き渡る日が期待されています。
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