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世界デジタル政府ランキング2023~日本10位、タイ19位

2023年11月30日 配信

早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所は2023年11月30日、「第18回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2023」を発表しました。この研究調査分析では、デジタル先進国66か国・地域を対象に、国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価しており、デジタル社会への貢献により、世界銀行、アジア太平洋経済協力(APEC)、OECDをはじめ世界の官民関係機関からも注目されています。日本は10位、タイは19位でした。



2023年度調査結果(世界デジタル政府ランキング2023 総合ランキング)

早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所のランキングはデジタル政府の潮流を分析する上で十分なビッグデータを有しています。今回は、下位グループを2減4増として組み換えて66か国・地域を対象にし、評点も各種アプリケーションが出現したオンライン・サービス部門を14ポイントに増やしました。

18回目を迎えた2023年度のランキング総合順位は表1の通りです。

 デンマークは3年連続で1位。カナダは昨年3位から1つ順位を上げて初の2位となっています。トップ10のうち、昨年より順位を上げたのは、イギリス(6位→3位)、韓国(7位→6位)、オランダ(17位→8位)、アイルランド(14位→10位)。特に8位のオランダは市民参加、行革分野が伸びて昨年17位からの大躍進。また、10位のアイルランドは行財政改革などが奏功して昨年14位から4ランクアップでした。日本は18年目にして初めてトップ10位圏外となりました。

 各国のデジタル化の進捗度の差は、トップ10のなかでも7位の米国と8位のオランダの間に約3.0ポイントの総合スコアの開きがあり、上位国の中でも総合スコア差が顕著になっています。これらの進捗度の差異をもたらす複数の要因は、当研究所のHP(https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm)に掲載しているレポートにまとめています。レポートは、日本語版本文並びに英語版を公開しており、デジタル政府を分析する際に作成した上位25か国の国別評価レポートを含め各国の諸課題を多面的に分析しています。なお、英文の国別評価レポート約220ページは公開中です。このほか、評価レポートには、ランキング内容を解説するだけでなく、過去18年にみる世界のデジタル政府の進展、総合ランキングの推移、主要国のデジタル政策、注目の新潮流や提言などのテーマをまとめています。

 

レポートの概要

 本レポートは、官民のDXとデジタルエコノミーの双方に関するさまざまな情報とデータを提供します。これらが経済成長の鍵を握ります。その点、ポスト・コロナに顕著なデジタル格差並びにイノベーション格差の拡大に対する警鐘を鳴らしています。

 2023 年の本ランキングは、政府活動におけるデジタル技術の利活用の重要な傾向を示しています。レポートの分析ではこれまでもAI登場など特筆すべきいくつかの新しい傾向を見出してきました。今後もデジタル分野は力強く成長し続けることを示しています。

 とりわけ、2023年最大のトピックは生成AIの議論です。今回はAIの主要国行政への応用事例を論述しています。今年5月のG7サミットでは、国際的なルール形成の枠組みを構築する広島AIプロセスの推進が合意され、10月に当研究所も参加した京都で開催された国連会議「IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)2023」でも、岸田首相がAIを巡って国際的なルール作りを牽引するとし、AI開発者向けの国際指針や具体的な取り組みを示す行動規範の策定と合意を目指す、と発表しました。行政分野でも、生成AIの活用が議論展開される中で、透明性やガバナンスに寄与するデジタル政府の取り組みに注目が集まります。

2023年は、新型コロナウイルスによる世界的な影響がひと段落し、デジタル政府分野も新技術の利活用や、オンラインと対面を活かしたハイブリッド型デジタル政府や、スマホなどモバイル利活用のモバイル政府が普及するなど、デジタル政府の全体活動がコロナ前より分野別の高低差はありますが活発化しています。

 また、ランキング上位国は、コロナパンデミックの経験から効率化や生産性の向上、デジタル格差対応に資する行政サービスを重視する特徴がみられます。各国の政府部門は、デジタル格差の縮小にむけてトップを走るデジタル先進国のDXに学び、そのレベルに追随する傾向は昨年以上に進んできました。

 上記のAIやスマートシティのハイライトに加えて、今回はデジタル政府に関する以下の解決すべき8 項目のグローバルな社会・経済・政治的課題を取り上げています。

(1)   デジタル・イノベーション格差(AI,ロボティクス,量子コンピューティングなど)
(2)   高齢社会や少子化等の人口問題対応
(3)   国境を越えた「オープン・イノベーション」のグローバル標準化
(4)   グローバルおよびローカルコミュニティ両方におけるデジタル・リテラシー格差
(5)   ロシア・ウクライナ問題,中東問題等に端を発するサイバー攻撃対応や,偽情報対策
(6)   都市と農村のデジタル化推進の顕著な地域差異
(7)   中央政府と地方自治体の不十分な協力体制
(8)   行政サービスの品質向上と関連人材の最適配置

 加えて、国連の SDGsには、17部門の達成目標があります。デジタル政府の利活用については残念ながら高評価とは言い難いですが、デジタル政府は、各SDGsセクターに必要なスムーズなDXを積極的にサポートしています。

 本レポートでは次の点についても分析、論究しています。

(1)   英語版はICT先進国66か国・地域のスコア、並びに約180頁に及ぶトップ25か国の国別評価レポート
(2)   過去18回の発表作業に基づくデジタル政府の歴史的推移の分析
(3)   デジタル政府の新潮流や経済・社会に与える影響を「DX」、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」、「ヘルスケア」、「生成AI」、「個人情報保護」、「スマートシティ」、「DX人材」、「サイバーセキュリティ」、「SDGs」分野などを切り口にハイライトを解説
(4)   当研究所創設者の小尾敏夫名誉教授が提唱する「第5世代デジタル政府構想」の提言

 

日本の課題

 日本の課題と構造的弱点は、次のように総括できます。

〇 司令塔機関としてのデジタル庁の役割、権限の実効性に課題が残ります。官庁の縦割り行政の弊害、遅れる行政のDXやスピード感の欠如は引き続きの課題です。

〇 電子政府(中央)と電子自治体(地方)の地方自治法などに基づく法的分離による意思決定の複雑性。

〇 都道府県、市区町村の行財政・デジタル格差の拡大は、人材、技術、予算面で顕著に。

〇 デジタル人材の重要性の理解啓蒙は一定の効果があります。しかし、レイヤー別の人材育成モデルの普及はいまいちです。

〇 マイナンバーカードの最大の課題は、安定的稼働とユーザビリティの確保。したがって、利活用率の維持促進のためにヒューマンエラー解消など行政や国民への継続的な啓蒙活動は必須です。

〇 国民視点のAI活用時代のデジタル政府の在り方の探求。

〇 急増するサイバーセキュリティ・トラブル対策と関連するリテラシー向上のための教育訓練。

〇 ポスト・コロナ時代に不可欠な効率的、生産性に寄与する最適な行政イノベーションの向上。

〇 激甚災害やパンデミック対策は非平時(有事)のみならず平時からのサステナブルな対応が不可欠であり、デジタル政府は災害予防を徹底し、非効率コストの解消にも貢献すべきです。

 

日本への提言

 デジタル政府の最優先事項として次の4項目の提言が挙げられます。

① 日本のデジタル政府が誕生して(以前はe-Gov)まだ20年余しか経過していません。世界もほぼ同じ事象と言えます。本報告は18回に及ぶ研究調査分析の集大成ですが、18年間の時系列分析から得た貴重な歴史的変遷を評価分析しています。将来のデジタル政府像(モデル)を予見するうえで必要な施策を多面的に論述しています。確実に急成長続けるAIが人類社会に挑戦するシンギュラリティ事象を歴史的教訓として是非学んでほしいと思います。

② 今やるべきことは、直面する少子・超高齢・人口減少社会を見据え、デジタル活用による官民連携やイノベーションの推進による行財政のコスト削減や効率化、積極的且つ最適なデジタル投資です。また、深刻な高齢社会問題を基調に国民生活の利便性向上に寄与する施策を率先的に実施すべきです。すなわち、直面するデジタル社会と高齢社会の総合的融合によって、デジタル政府の創生理念であるスピーディな行財政改革と市民中心のワンストップ行政サービスの実行が求められます。

③ ポスト・コロナ時代のデジタル・イノベーション成長戦略の基軸は個別的(部分的)集積ではなく、新総合ロードマップの策定が急がれます。

④ 高品質のデジタル・インフラは、5G/6Gの開発・普及、AI・ブロックチェーン利活用をベースに当研究所が提唱する「第5世代デジタル政府」の構築に向けてのコア(中軸)といえます。

早稲田大学世界デジタル政府ランキングを創設した小尾敏夫現名誉教授が貢献してきたITU、OECD、APEC、ユネスコ、国連経済社会局など国際機関はDX、デジタル・イノベーション指向に大きく舵を切っています。本レポートが描くグローバルな未来デジタル社会へのチャレンジがスタートしています。

 

「早稲田大学世界デジタル政府ランキング」とは

 ICT先進国66か国のデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価する本研究調査分析は、2005年に始まり、今年で18年目を迎えました。デジタル政府の進展が国民の利便性、及び行財政改革に貢献するとして、世界中の官民の関係機関からも注目されています。

 各10指標「デジタル・インフラ整備」「行財政最適化」「アプリケーション」「ポータルサイト」「CIO(最高情報責任者)」「戦略・振興」「市民参加」「オープン政府データ・DX」「セキュリティ」「先端技術」のベンチマークで分析しています。

 隔年発表の国連調査では4項目のベンチマークを指標として使用していますが、本調査ではこれらの計 10 項目の部門別指標を活用し多岐詳細にわたり分析しています。当研究所の総合性、厳格な中立性、高度な学術的分析力が世界中から評価されています。とりわけ、最近出色であるDXやAI活用もランキング分析の評価指標に追記し分析力を向上させています。

 本評価モデルは2005年に研究所初代所長の小尾敏夫名誉教授によって開発され、ランキング手法が確立されました。当研究所は国際機関APECのデジタル政府研究センターも兼務しています。本研究調査では最新で、かつ最も正確な情報を得てデータ分析及び評価するために、NPO法人国際CIO学会(理事長:岩﨑尚子)の世界組織であるInternational Academy of CIO傘下の提携大学を代表する専門家による合同研究調査チームを編成しています。

 連携大学は、北京大学(中国)、ジョージ・メースン大学(米国)、ボッコーニ大学(伊)、トルク大学(フィンランド)、タマサート大学(タイ)、大統領連邦政経大学(ロシア)、ラサール大学(フィリピン)、バンドン工科大学(インドネシア)、それに統括拠点の早稲田大学(日本)です。研究調査プロセスでは専門家チームが意見交換し、さらに各国政府デジタル部門、国連、OECD、世界銀行、APEC等国際機関との意見交換を重視しています。

 電子政府・自治体研究所はデジタル社会の世界的連携と発展に向けてデジタル政府活動を具体的指標にて分析し、また当研究所は国連本部とSDGsなどへの課題解決フォーラムを共催しています。

 

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