2026年8月16日 配信

タイでかつて「麻薬王」と呼ばれたラオター・セーンリー氏(เล่าต๋า แสนลี่)が2026年8月14日、バンクワン中央刑務所から釈放されました。現在86歳。タイ北部チェンマイ県のミャンマー国境地帯で長年にわたり大きな影響力を持ち、かつて「黄金の三角地帯」の麻薬王クンサーの「右腕」とも呼ばれた人物です。2016年、約20キロの覚醒剤「アイス」の取引をめぐるおとり捜査で逮捕され、終身刑となりましたが、6回にわたる恩赦による減刑を経て、約10年ぶりに自由の身となりました。各報道が伝えています。
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ラオター氏は、タイ北部チェンマイ県メーアイ郡タートン地区を拠点としていた人物です。リス族出身で、村長や地域行政に関わった経歴を持ち、地元の有力者として知られていました。
その経歴で特に注目されるのが、ミャンマー・シャン州を拠点としていた武装組織モン・タイ軍(MTA)との関係です。
タイメディアでは、ラオター氏はかつてMTAの兵士として活動し、「黄金の三角地帯」の麻薬王として世界的に知られたクンサー(Khun Sa)に近い人物で、「右腕」とも呼ばれていたと報じられています。
その後、タイ側のチェンマイ県メーアイ郡に拠点を移し、地域社会で影響力を強めていきました。
ラオター氏が特異な存在だったのは、麻薬取引との関係が取り沙汰される一方、地域の有力者として「表の顔」も持っていたことです。
過去の報道によると、ガソリンスタンドを経営したほか、コーヒーの栽培や加工などの事業も展開していました。
チェンマイ北部のファーン、チャイプラーカーン、メーアイ一帯で影響力を持ち、特に本拠地とされたフアイサーン村周辺では、親族や関係者も地域行政に関わるなど、強い地盤を築いていたと報じられています。
ラオター氏が捜査当局から注目されたのは、2016年が初めてではありません。
2003年にはラオター氏と息子らが、麻薬取引や銃器、殺人依頼などをめぐる容疑で逮捕されました。
しかし、関係者の供述が証拠の中心だったことなどから有罪には至らず、その後、最高裁で無罪となったと報じられています。
捜査当局にとっては、長年にわたって名前が挙がりながら、決定的な証拠をつかむことが難しい人物でもありました。
大きな転機となったのが2016年です。
麻薬取締警察はラオター氏のネットワークを追跡し、女性警察官が身分を隠して接触するおとり捜査を進めました。
裁判記録をもとにした報道によると、最初の取引では約1キロのアイスを55万バーツで購入。その後、さらに大量のアイスを購入する取引を持ちかけました。
そして2016年10月11日、捜査は最終局面を迎えます。
舞台となったのは、チェンマイ県メーアイ郡タートンにあった「ラオター・ペトロリアム」と呼ばれるガソリンスタンドでした。
捜査当局が設定したのは、約19~20キロのアイスを1100万バーツで購入する大規模な取引でした。
裁判記録をもとにした報道によると、取引当日、ラオター氏はガソリンスタンド内のコーヒーショップ付近に座り、現場の動きを見ていました。
ラオター氏が薬物の入った袋を取り出すよう指示し、関係者が周囲を警戒。取引の様子は捜査当局によって記録されていました。
そして捜査員が身分を明かし、一斉に逮捕しました。
この作戦ではラオター氏や息子、関係者ら計15人が拘束されました。
当時の報道では、アイス約20キロ、取引用の現金1100万バーツ、複数の銃器などが押収され、関連資産についても大規模な差し押さえが行われました。
長年ラオター氏を追っていた捜査当局が、ついに麻薬取引の現場を押さえた形となりました。
2017年12月13日、刑事裁判所はラオター氏らに判決を言い渡しました。
裁判では、2016年9月から10月にかけて行われた2回のアイス取引などが審理され、ラオター氏の関与が認定されました。
裁判所はラオター氏について死刑相当と判断しましたが、供述などが有利に考慮され、終身刑に減刑。さらに罰金250万バーツが科されました。
妻には禁錮25年と罰金250万バーツ、別の共犯者には終身刑が言い渡されました。
また、息子のウィジャーン・セーンリー氏と、もう1人の関係者バーラミー・バーラミークアクーン氏には死刑判決が言い渡されました。
ラオター氏側は控訴しましたが、2019年12月12日、控訴裁判所は一審判決を支持しました。
裁判所は、警察が長期間にわたって捜査を行い、麻薬取引の過程を映像などで記録していたことなどを踏まえ、ラオター氏らの関与を認定しました。
ラオター氏への終身刑は維持され、息子のウィジャーン氏らへの死刑判決も維持されました。
しかし、その後ラオター氏の刑期は段階的に短縮されていきました。
Thai PBSが2026年8月16日に報じたところによると、ラオター氏は2020年以降、計6回にわたって恩赦による減刑の対象となりました。
2020年には、高齢受刑者であることなどから刑期が35年6か月20日に短縮。その後も恩赦の対象となり、2021年には25年3か月13日、さらに17年8か月13日へと短縮されました。
2025年には受刑者としての等級が上がり、恩赦によって刑期は12年1か月21日に。そして2026年の恩赦では8年3か月28日となりました。
すでに拘禁されていた期間がこの刑期を上回っていたことから、釈放の対象となりました。
2026年8月14日、ラオター氏はバンクワン中央刑務所から釈放されました。
2016年10月11日の逮捕から、実際に拘禁されていた期間は約9年10か月です。
終身刑を言い渡された「麻薬王」は、86歳になって再び刑務所の外へ出ることになりました。
今回の釈放は、2026年の恩赦令と矯正当局の基準に基づいて行われたものです。
ラオター氏の釈放は、タイ国内でも注目を集めています。
2016年の逮捕作戦に関わった元麻薬取締警察幹部のレワット・クリンゲーソーン氏は8月16日、重大な麻薬事件で終身刑となった受刑者が相次ぐ減刑を受けて出所したことについて、矯正局に減刑基準を説明するよう求めました。
レワット氏は、警察が長期間にわたって捜査し、検察が起訴し、裁判所が終身刑を言い渡した重大事件だったことを振り返り、麻薬犯罪に対する減刑のあり方に疑問を呈しています。
一方、ラオター氏の釈放そのものは、恩赦令に基づく手続きを経て行われています。
クンサーに近い人物として「右腕」とも呼ばれ、チェンマイ北部では地域の有力者として表の顔を持ちながら、長年にわたり麻薬取締当局から追跡されたラオター・セーンリー氏。
2003年の逮捕では無罪となりましたが、その後も捜査当局の追跡を受け、2016年には女性捜査員を投入したおとり捜査によって約20キロのアイス取引の現場を押さえられ、逮捕。終身刑となりました。
それから約10年。6回にわたる恩赦を経て、2026年8月14日、86歳となったラオター氏は再び自由の身となりました。
※出典
Thai PBS:ปล่อยตัว “เล่าต๋า แสนลี่” วัย 86 ปี ผู้ต้องขังคดียาเสพติด-อาวุธปืน
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