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光るカタツムリをタイで発見~80年ぶり世界で2例目 同時5種で確認

2023年9月27日 配信

光るカタツムリをタイで発見~80年ぶり世界で2例目 同時5種で確認

中部大学応用生物学部の水野雅玖修士と大場裕一教授、タイ王国チュラロンコン大学のアーシット・ポンヨタ博士およびソムサク・パンハ教授らは、タイの各地からカタツムリを採取し、その中から、これまで発光することが知られていなかった5種を見つけました。



【ポイント】
■発光するカタツムリを5種、タイで発見した。1943年に日本人生物学者の羽根田弥太博士によってシンガポールで発見され、これまで世界で唯一知られていた発光するヒカリマイマイ属の一種(通称ヒカリマイマイ)とは異なる種だった。
■5種のうち4種は、発光することがわかっていなかったプファニア属。これにより、世界に発光するカタツムリは2属5種いることになった。
■プファニア属のカタツムリは、体(外套膜と腹足)が連続的に緑色に発光する(図1)。
■カタツムリの発光の役割は不明であるが、光ることでホタルなど毒を持った発光生物に擬態して敵からの捕食を逃れている可能性がある。

光るカタツムリをタイで発見~80年ぶり世界で2例目 同時5種で確認

【研究の概要】
軟体動物有肺類のカタツムリは世界に約30,000種が知られていますが、そのうち発光するのは学名クォンチュラ・ストリアータ(Quantula striata:通称ヒカリマイマイ)が世界で唯一だと長い間考えられてきました。このヒカリマイマイを最初に発見したのは、日本の羽根田弥太博士(元・横須賀市博物館館長)。羽根田博士が1943年にシンガポールに滞在した際に見つけました。

このたび、中部大学応用生物学部の水野雅玖修士と大場裕一教授、タイ王国チュラロンコン大学のアーシット・ポンヨタ博士およびソムサク・パンハ教授らは、タイの各地からカタツムリを採取し、その中から、これまで発光することが知られていなかった5種を見つけました。

今回発見された5種のうち、1種はヒカリマイマイと同じヒカリマイマイ属。形態学的な解析から、ヒカリマイマイとは異なる種Q. weinkauffianaであることがわかりました。発光の仕方は、ヒカリマイマイと同様で、口の付近が緑色に点滅します。

残るは、これまで発光することが知られていなかったプファニア属(Phuphania;和名無し)の4種(P. crossei, P. globosa, P. carinata, P. costata)です。これらの発光の仕方は、ヒカリマイマイとは異なり、体(外套膜と腹足;補足解説1)の一部が連続的に緑色に光ります。また、休眠中の個体(図2)や卵も同じ緑色発光することが分かりました。

カタツムリが発光する理由については不明ですが、発見した大場教授らは、敵からの捕食を回避する役割があると考えています。陸上の発光生物には、ホタルなど不味い味を持っていたり毒を持っていたりするものも知られています(補足解説2)。発光カタツムリは、光ることでそれらの発光生物に擬態して捕食を逃れている可能性があります。

発光する有肺類(カタツムリやナメクジ)は、SF特撮テレビドラマ『ウルトラQ』に登場した「ゴーガ」や「ナメゴン」のような怪獣ではお馴染みでしたが、東南アジアにはそのような生物が複数種実在したのです。ただし、ゴーガやナメゴンと違って目は光りません。また、殻も2−3センチ程度と小さいので、タイの森で出会ったとしても危険はなさそうです。

今回のこの成果は日本時間9月13日(水)、学術出版大手シュプリンガーネイチャーが発行する科学誌サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)電子版に掲載されました。

発光生物は世界におよそ7000種がいるとされていますが、その多くは深海にいます。また、深海の生物は研究が進んでいないため、新しい発光生物が見つかることはよくあります。

しかし、今回のように、陸上から発光する生物が新たに見つかることは非常に珍しく、このことは生物多様性の高いタイの自然の中にはまだ未発見の生物とその現象が多く残されていることを示唆します。

中部大学はチュラロンコン大学と大学間協定を結んでおり、今後もさらにタイの生物調査を進めていく予定です。

なお、本研究は、タイ王国研究助成(TRF-DPG628001)、COEプログラム(BDC-PG2-160012)、チュラロンコン大学イノベーション基金(CU_FRB65_dis (8) 096_23_26)、チュラロンコン大学ポスドクフェローシップ、およびJST次世代研究者挑戦的プログラム(JPMJSP2158)の支援を受けて実施されました。

【論文情報】
掲載誌: Scientific Reports(シュプリンガーネイチャー社)
タイトル:A new discovery of the bioluminescent terrestrial snail genus Phuphania (Gastropoda: Dyakiidae)(邦訳:発光性カタツムリPhuphania属(腹足類、タテガタベッコウ科)の新発見)
著者:アーシット・ポンヨタ(Arthit Pholyotha)1、矢野大地(やの だいち)1、水野雅玖(みずの がく)2、チラサク・スチャリット(Chirasak Sutcharit)1、ピヨロス・トンカード(Piyoros Tongkerd)1、大場裕一(おおば ゆういち)2,*、ソムサク・パンハ(Somsak Panha)1,*(*印は連絡著者)
1. チュラロンコン大学理学部生物学科、2. 中部大学応用生物学部環境生物科学科
DOI:doi.org/10.1038/s41598-023-42364-y
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-023-42364-y


<補足解説>
(補足解説1)
外套膜と腹足:外套膜とは、軟体動物の体を覆う膜のことで、カタツムリでは殻の中から入り口を覆っている。腹足とは、カタツムリでは移動するための足の部分。
(補足解説2) 
ホタルと毒:ホタル類の昆虫は、不味い味を持っていて、中には毒を持っている種も知られている。このようにしてホタルは、光を使って仲間とコミュニケーションするだけでなく、敵の捕食者に対して自分が不味いことをアピールしていると考えられている。

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